「TBIって簡単に見えて、実は一番難しい…」
「患者さんに伝わっているか不安…」
そんな声を、多くの歯科衛生士・歯科助手の方から聞きます。
歯磨き指導=TBI(Tooth Brushing Instruction)は、歯科の現場における最も基本かつ重要な指導技術です。
この記事では、研修で「本当に役立った」と実感されたTBIのポイントを中心に、伝わる・続けてもらえる・好印象になる極意を徹底解説します。
1. TBIとは?なぜ重要なのか
TBIとは、患者さんが自宅で行うセルフケアの質を高めるための技術指導です。
◆ TBIの本当の目的は“患者さんが磨けるようになる”こと
「この磨き方をしてください」と言うだけでは、実はTBIにはなりません。
本当に大切なのは、患者さんが「自分で正しく磨けた」と実感できる状態に導くことです。
なぜなら、どんなに良い処置をしても、日々のセルフケアが不十分だと再発や悪化に繋がってしまうからです。TBIは、予防歯科の要(かなめ)といえます。
2. 研修で学んで「これは現場で本当に使える!」と思ったTBIのポイント3つ
◆ ① 染め出しを活用して“見える化”する
染め出し液を使うことで、患者さん自身が“どこに汚れが残っているか”を視覚で理解できるようになります。
- 歯科ミラーや手鏡を渡して、染め出し後の歯を一緒に確認
- 「ここは上手に磨けてますね」「ここの奥がちょっと残ってます」など、一緒にチェックするスタンスが大切
- 患者さんのスマホでBefore→Afterを撮ると、家庭でのモチベーションUPにもつながる
◆ ② 道具は“その人に合ったもの”を提案する
一人ひとり口腔内の状態も生活も違います。
そのため、歯ブラシや補助清掃用具の提案は「パーソナライズ」が鍵になります。
- 不器用な方には短めでグリップの太い歯ブラシ
- 親知らずが磨きにくい方にはタフトブラシ
- 歯間ブラシはサイズを必ず合わせて選定する
▶ 道具の選定も指導の一部。「買っても使ってない」にならないよう、理由と使い方をセットで伝えましょう。
◆ ③ “説教口調”ではなく共感+提案で伝える
研修で印象に残っていたのは、指導する際の「伝え方」。
指摘だけだと「怒られた」と受け取られ、TBIの印象がマイナスになりがちです。
- NG:「ここ、全然磨けてませんよ」
- OK:「ここの奥、磨きにくいですよね。実はコツがあるんです!」
▶ “できていない”より“できるようになる”気持ちを育てることが、TBIの本質です。
3. TBIで患者さんの心をつかむ伝え方
実はTBIは「コミュニケーション技術」でもあります。
“この人に話してよかった”と思ってもらうには、言葉の選び方が重要です。
◆ 実際に効果があった声かけ例
- 「○○さんの前歯、とてもキレイに磨けてますね!あとは奥だけちょっと工夫すれば完璧です♪」
- 「1日1回、夜だけでもしっかり磨けたら大丈夫ですよ」
- 「“ここだけ気をつければOK”というポイントだけお伝えしますね」
▶ 褒める→共感→アドバイスの順に話すと、素直に受け止めてもらいやすくなります。
4. よくある失敗とその対策
よくあるTBIの失敗 | 改善ポイント |
---|---|
「磨けてません」とだけ伝えてしまう | 「ここをこう磨くともっとキレイになりますよ」と改善提案まで添える |
専門用語や早口で説明してしまう | 身近なたとえ(歯ブラシはスポンジのように、など)を使う |
道具の紹介で終わってしまう | 実際に手に取って体験してもらう、使い方を一緒に練習する |
5. 現場で“できる”衛生士がやっているTBIの工夫
◆「前回の染め出し結果」と「今日の結果」を比較して共有
初回の染め出し写真と今回の状態を比べて見せると、患者さん自身も驚くほど変化を実感できます。
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「ここ、前は真っ赤だったところが、今回はかなり薄くなってますよ!」
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「この前より全体的にすごくきれいに磨けてますね」
▶ 見た目の“変化”を共有することで、患者さんにとっての“努力の成果”が目に見えるようになります。
これは大きなモチベーションアップにつながり、継続的なセルフケアの後押しにもなります。
◆「1人ひとりに指導記録シートを作成」
毎回のTBI内容をメモした個別の指導記録シートは、患者さんにも好評。特に以下のような内容を含めると効果的です。
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使用している歯ブラシや補助具の種類
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苦手部位と改善ポイント
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今回のTBIでの重点アドバイス
-
次回来院時のチェック項目
▶ 毎回内容を“引き継ぐ”ことで、TBIの一貫性が生まれ、信頼感もUP。
患者さんも「自分のことをちゃんと見てくれている」と感じ、継続的な関係性が築けます。
◆「実況解説」しながら指導
患者さんが実際に歯を磨く様子を見ながら、その場で“実況解説”スタイルで声かけをすると、より自然に修正ができます。
たとえば:
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「今、ブラシの角度すごくいいです!そのまま5回こすってみてください」
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「その方向、あとちょっとだけ手首を外に返すと当たりやすいです」
▶その場で正解を伝え、“感覚として覚えてもらう”のがポイント。
実演→その場で修正→もう一度チャレンジ、という流れを通じて、「できた!」という実感を得られます。
まとめ
TBIはただの歯磨き指導ではなく、患者さんの健康意識を育てる“導きの技術”。
その人に合った内容で、寄り添いながら伝えることで、「またこの人に聞きたい」と思ってもらえる存在になれます。
研修で学んだことをベースに、自分らしいTBIスタイルを築いていきましょう!