歯科医院は、唾液・血液・飛沫など感染リスクが日常的に存在する環境です。
歯科助手は直接的な治療行為は行わないものの、器具の管理や環境整備を通じて感染予防の重要な役割を担います。
ここでは、現場で徹底すべき基本ルールと習慣をまとめます。
目次
1. 基本ルール:感染予防の3本柱
① 標準予防策(スタンダードプリコーション)
- すべての患者を「感染している可能性がある」と想定
- 手袋・マスク・アイガードを着用し、患者ごとに交換
- 器具・表面は常に消毒または滅菌
② 接触感染対策
- 使用済み手袋でドアノブ・PCキーボードを触らない
- 滅菌前の器具は専用トレーで移動
- 清潔ゾーンと不潔ゾーンを明確に分けて作業
③ 飛沫感染対策
- 口腔外バキュームの活用
- マスクは鼻までしっかり覆う
- エアロゾル発生時は必要に応じてフェイスシールド使用
2. 日常業務で徹底すべき習慣
項目 | ポイント | 実践例 |
---|---|---|
手指衛生 | 石鹸+流水20秒、またはアルコール消毒 | 患者対応前後・グローブ着脱時 |
器具管理 | 使用直後は血液・汚れを乾燥前に洗浄 | 超音波洗浄器や専用ブラシ使用 |
環境清掃 | ユニット・ライト・ハンドル等を毎回消毒 | 次亜塩素酸水やアルコール綿 |
個人防護具(PPE)管理 | 破損・汚染があれば即交換 | グローブ二重着用も場面に応じ検討 |
廃棄物処理 | 感染性廃棄物は黄色バイオバッグへ | 針はシャープスコンテナに |
3. 新人が陥りやすいミスと回避法(詳細)
ミス①:グローブのまま別作業
- なぜ危険か:グローブの表面には患者の唾液や血液、細菌が付着しているため、そのままPCや電話、ドアノブを触ると二次汚染の原因になります。
- 回避法:別作業を行う前に必ずグローブを外し、手指消毒を行う。短時間の作業でも油断せずに交換する。
ミス②:器具を乾燥させてから洗浄
- なぜ危険か:血液や唾液が乾燥するとタンパク質が固まり、汚れが落ちにくくなり、消毒効果も下がります。
- 回避法:使用直後に流水または専用洗浄液で予備洗浄を行い、その後超音波洗浄器やブラシで仕上げる。可能であれば治療後すぐに処理する動線を確保する。
ミス③:PPE(個人防護具)の再利用
- なぜ危険か:一見きれいに見えても、マスクやフェイスシールド、エプロンの表面には目に見えない汚染が残っています。再利用は感染拡大のリスクを高めます。
- 回避法:患者ごとに必ず交換。使い捨てできないPPEは、使用後すぐに適切な消毒・洗浄を行う。
4. 感染予防を徹底するための心構え(詳細)
「慣れた作業ほど注意深く」
- 毎日同じ作業をしていると、無意識に“手順を飛ばす”癖がつくことがあります。
- 例えば消毒液の希釈倍率や滅菌パックの封入方法など、小さなミスが大きな感染リスクに直結するため、常に「確認 → 実行 → 再確認」の意識を持つことが大切です。
医院全体で統一ルールを運用
- 感染予防は一人の努力では成立しません。全スタッフが同じ基準で動く必要があります。
- 例:消毒液の種類・希釈比率、グローブ交換のタイミング、ユニット清掃の順序などをマニュアル化し、定期的に見直す。
- 新人教育時に「個人のやり方」ではなく「医院の標準手順」を徹底する。
定期的な研修参加
- 感染症対策の最新情報や新しい器材・消毒法は年々アップデートされます。
- 学会、歯科衛生士会、メーカー主催のセミナーなどを活用し、現場で即活かせる知識を習得。
- 研修後は学んだ内容をチーム全体に共有し、全員で改善に取り組むことが重要です。
5. まとめ
歯科助手は、直接治療を行わなくても医院全体の感染管理を支える要です。
一つ一つの習慣を正しく徹底することが、自分や患者、スタッフ全員を守ります。
感染予防は“特別な時だけ”ではなく、毎日の積み重ねが最大の武器です。