歯科助手として初めて働く日――多くの方が「器具の名前や手順を覚えるのに精一杯」と思いがちですが、実は最初に身につけるべきは“職場マナー”です。
医療現場では技術や知識以上に、第一印象・態度・信頼感が大切です。患者さんはもちろん、院長や先輩スタッフからの評価も“マナー”が大きく左右します。
この記事では、明日から実践できる基礎マナーと、歯科助手特有の注意点をまとめます。
1. あいさつ・言葉遣いの基本
なぜ重要?
患者さんにとって受付や診療室で最初に接するのが歯科助手であることは多いです。そこで明るく丁寧な対応ができれば、医院全体の印象が良くなります。
実践ポイント
- 患者さんへ:「こんにちは」「お待たせいたしました」「どうぞこちらへ」と、目を見て笑顔で
- スタッフ同士へ:出勤時は「おはようございます」、退勤時は「お疲れさまでした」と必ず声をかける
- 返事は「はい」+軽く会釈やうなずき
現場の声
「忙しくてもあいさつは必ずする子は、すぐに信頼されます」
(都内クリニック勤務・先輩歯科助手)
2. 身だしなみ・清潔感は“医療人の制服”
基本ルール
- ユニフォーム:シワ・シミなし。毎日洗濯して常に清潔な状態に
- 髪型:肩にかかる髪は束ね、前髪は目にかからないよう固定
- 爪・ネイル:短く切り、派手な色やアートはNG(感染防止のため)
- 香り:香水は控えめ。柔軟剤の香りも強すぎないよう注意
なぜ大事?
医療現場では「見た目=衛生管理」と直結して評価されます。患者さんは見た目から無意識に安心感を判断するため、身だしなみは必須条件です。
3. 報告・連絡・相談(ホウレンソウ)はチーム医療の基本
実践シーン例
- 報告:器具が足りない、患者さんの様子がいつもと違う
- 連絡:予約の変更や急患対応を先輩や院長にすぐ共有
- 相談:判断に迷うことがあれば独断で動かず確認
注意点
- 「あとで言おう」はミスのもと
- 口頭だけでなくメモやチャットツールで記録を残すと◎
4. 診療中の立ち居振る舞い
良い動き方
- 静かに歩く・ドアの開閉音を立てない
- 器具を渡すときは患者さんの顔に影を落とさない
- 施術中の声かけ例:「お水を流しますね」「少し冷たいです」
患者さん視点
治療中の緊張感は強いため、助手の優しい声かけや落ち着いた動きは安心感につながります。
5. 歯科助手特有のマナー
感染予防
歯科の診療現場は、唾液・血液・エアロゾルなど感染リスクが高い環境です。歯科助手は**「見えない汚れを常に意識する」**ことが求められます。
- 使用済み器具は手袋をつけた状態で専用容器に廃棄
使用後の器具は滅菌・消毒のためのルートに沿って正しく処理します。滅菌室や専用トレーに持ち運ぶ際も、他の清潔器具や作業台に触れないよう注意。 - グローブの使い回し禁止
患者さんごとに必ず交換します。たとえ同じ診療台内の短時間作業でも、別患者の治療に移るときは必ず新しいものに。グローブをしたままカルテやパソコンに触れると二次汚染の原因になります。
現場例
「滅菌ルールを守らないと、クレームや感染トラブルだけでなく、医院の信頼低下にも直結します」(都内歯科医院 院長)
個人情報保護
患者情報は医療機関の生命線です。守秘義務を徹底することはもちろん、物理的な取り扱いにも配慮が必要です。
- カルテや患者情報を他人に見せない
カルテは診療室内でのみ開き、第三者が覗き込める場所に放置しない。パソコン画面もログオフや画面ロックを徹底。 - 家族や友人にも患者の話はしない(守秘義務)
「今日○○さんが来た」などの軽い雑談もNG。SNSでのうっかり投稿も重大な違反になります。
6. 新人がやりがちな失敗と回避法
① 指示を最後まで聞かず動く
新人時代は「早く動かなきゃ」という焦りから、途中で話を切ってしまうことがよくあります。結果、準備ミスや二度手間に。
- 回避法:メモを取り、指示の最後まで聞いてから復唱する。
例:「○○を取ってきて → 滅菌済みを3本用意して」まで聞く。
② 患者さんに専門用語をそのまま使う
「形成しますね」「印象材を入れます」などは患者には意味が伝わらないこともあります。
- 回避法:一般的な言葉に言い換える。
例:「歯の形を整えますね」「型どりをしますね」
③ 忙しさで笑顔が消える
診療が立て込むと、無意識に表情が硬くなりがちです。患者さんは不安や緊張を感じやすくなります。
- 回避法:深呼吸で表情をリセット。
患者さんと目が合った瞬間に微笑むことを意識する。
まとめ
新卒歯科助手にとって、最初の数カ月は「マナーを覚える=信頼を積み重ねる」時期です。
あいさつ・身だしなみ・ホウレンソウの3本柱を意識し、日々の診療に臨みましょう。
マナーが身につけば、先輩のサポートを受けながら技術習得のスピードも格段に上がります。