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厚労省が推進する“歯科と全身疾患の関係”とは

― 予防から連携へ。いま歯科に求められている役割 ―


■ 導入文(リード)

「歯科と全身疾患のつながりが注目されている」
そんな言葉、最近よく耳にしませんか?

実はこれ、厚生労働省が政策として本格的に進めている“医科歯科連携の強化”が背景にあります。

歯科衛生士・歯科助手にとっても、お口だけを診ていればOK”な時代は終わりつつある今、全身とのつながりを理解することが不可欠になっています。

この記事では、厚労省の動きとともに、現場で役立つ知識や視点をわかりやすく解説します。


目次

1. 厚労省が進める「医科歯科連携」とは?

厚労省は近年、「全身の健康を支える“口腔ケア”」の重要性を強調しています。

具体的には以下のような政策が打ち出されています:

  • 歯科口腔保健の推進に関する法律(2011年施行)
    → 「生涯を通じた口腔の健康づくり」を支援する制度的な土台に。
  • 健康寿命延伸プラン(2021年~)
    → フレイル・誤嚥性肺炎予防に口腔管理が不可欠と明記。
  • 医科歯科連携加算の創設
    → 糖尿病やがん患者の術前術後の口腔管理に対して点数加算。

つまり、歯科が“全身の医療”の一部として正式に組み込まれ始めているのです。


2. なぜ今「歯と全身の関係」が重要視されているのか

背景には次のような社会的変化があります:

◆ 高齢化と慢性疾患の増加

→ 誤嚥性肺炎、糖尿病、心疾患など、口腔状態が悪いことで悪化する病気が多数

◆ 予防医療へのシフト

→ 医療費削減・健康寿命の延伸には、早期からの口腔ケアが効果的とされている

◆ エビデンスの蓄積

→ 「歯周病と糖尿病は相互に悪化させる」「口腔ケアが術後感染を防ぐ」といった科学的根拠が明らかに

▶ これらの要因から、口腔を“全身の入口”としてとらえる医療が加速しています。


3. 実際に関係が深いとされる全身疾患

全身疾患関連する口腔の問題関連性のポイント
糖尿病歯周病の悪化/炎症のコントロール難歯周病が血糖コントロールを阻害
誤嚥性肺炎舌苔・咀嚼力・唾液分泌の低下嚥下機能低下→細菌が気道に流入
心疾患(動脈硬化)歯周病による炎症性サイトカインの放出全身の血管に炎症反応を起こす可能性
認知症咀嚼低下・口腔機能の低下脳への刺激が減少する/栄養摂取低下

このように、歯の病気=口の中だけの問題ではないという理解が必要です。


4. 衛生士・助手が現場で意識すべきこと

日々のケアや患者対応でも、以下のような視点を持つことが大切です。

◉ 全身疾患の既往歴・服薬状況の把握

→ 「糖尿病です」「心臓の薬を飲んでいます」といった情報を聞き流さず、口腔内との関連を想定する視点が重要。

◉ 誤嚥リスクへの対応(高齢者・障がい者)

→ 舌苔のケア、口腔体操、咀嚼トレーニングなど、衛生士だからできるサポートが求められます。

◉ 医科への情報提供/連携

→ 「口腔状態を報告できる衛生士・助手」は、チーム医療に欠かせない存在になります。


5. 今後求められる“新しい歯科のかたち”

これからの歯科医療は「虫歯や歯周病を治す」だけでなく、“患者の人生・健康全体を支える”医療へと進化しています。

  • 在宅・訪問での口腔管理
  • 医科と連携した術前術後ケア
  • 地域包括ケアへの参加
  • 認知症・高齢者対応の強化

これらの中核を担うのが、歯科衛生士・助手の皆さんです。
「お口からはじまる健康支援」を、ぜひこれからも大切にしていきましょう。

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